妊婦さんのストレスは、どうして赤ちゃんと母体に影響が出るの?
このページの監修について
妊婦さんに正しい知識を持って安全な旅行を楽しんで頂くため、婦人科の専門医である成城松村クリニック院長 松村圭子先生に監修して頂いています。
「妊娠中はなるべくストレスなく過ごした方がいい」というのは、みなさんご存知の通り。身体の変化で、いろいろと戸惑うことも多い妊婦さん。ホルモンバランスの関係で心身ともに不安定になりやすいですが、お腹の赤ちゃんのためにも、なるべくリラックスして過ごしましょう。その理由を説明していきます。
妊娠中のストレスの原因は、ホルモンバランスにあり
妊娠すると、ホルモンバランスが変化することで、身体の変化の他にも心にも変化が起こりやすくなります。たとえば、理由の分からない不安だったり、悲しい気持ちになったりすることも。具体的に何のホルモンがどのように変化するのでしょうか?
変化するホルモンは主に3つ。エストロゲン、プロゲステロン、hCGです。
hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)は、お腹の赤ちゃんを育てるのに必要なホルモン。妊娠検査薬も、このホルモンが尿中に存在するかで判定を出します。妊娠後に一気に増え始め、妊娠12週頃をピークに急激に下がったあと、一定量を保ちます。
また、元々女性の生理周期に合わせてそれぞれ分泌していたエストロゲン、プロゲステロンですが、妊娠すると、エストロゲンとプロゲステロンの分泌が活発になり、体内で大幅に増加します。
各ホルモンの働き
女性の健康を守るうえでは欠かせないホルモンです。「発情ホルモン」「女性をつくるホルモン」とも呼ばれています。
その名の通り、女性らしい身体をつくったり、妊娠に備えて子宮の内膜を厚くしたりする作用があります。ほかにも乳腺の発育、初経発来の促進などの働きをします。
妊娠を維持したり、基礎体温を上げたりするホルモンです。妊娠が持続するように子宮内膜に分泌腺を発達させて、受精卵の子宮着床を促します。このホルモンが不足すると不妊症、子宮不正出血、月経過多の原因になります。
ホルモンバランスの変化が起こす影響
「マタニティブルー」という言葉は、本来は産後3日~10日くらいの間、一時的に気分が落ち込むことを指します。しかし、最近では妊娠中の不安や憂鬱にも使われていることが多いようです。産後マタニティブルーの原因は、出産と同時に女性ホルモンの分泌量が急激に減少してしまうため。妊娠中も様々なホルモンが分泌され激しい増減が起こり、心と身体のバランスが乱れるため、気分が不安定になってしまうのです。
- 理由もなく涙があふれたり、イライラする
- 眠れなかったり、食欲がなくなる
- 何をしてもつまらない
- 疲労感や、絶望感、疎外感などを感じる
ホルモンバランスが崩れると、むくみが起きやすくなります。妊娠中は黄体ホルモン(プロゲステロン)が多くなり、水分を溜めこみやすくなるからです。ホルモンバランスが崩れた結果、気分が低下し、日々の生活が億劫になると、体を動かす機会も減ってしまいます。ホルモンの乱れによって細部への血行不良となり、手足が冷え、むくみにつながることも。妊娠による体重増加が、血行不良に拍車をかけてしまうため、余計に体に水分が溜まりやすくなっているのです。
ストレス解消するには…
妊娠中は身体の変化や環境の変化で、どうしてもストレスが溜まってしまうもの。場合によっては体力が低下し体調不良に。お母さんや赤ちゃんともに、危険な状態になりかねません。お腹の赤ちゃんのためにも、適度にストレス解消を心がけましょう。
妊婦さんがストレスを解消するには、部屋の中でゆったりと過ごせるのがベスト。読書や映画鑑賞、音楽鑑賞は鉄板の対策方法ですね。もし外に出掛けられるならば、ウォーキングをしたり、あるいは信頼できる友人や家族と会話をしたり、ランチやお茶をしたりするのもおすすめ。
もし安定期に入り、体調が問題なく過ごせているのであれば、ちょっと遠出をして泊まりがけで旅行というのもいいですね。
成城松村クリニック 院長 松村圭子 先生
日本産科婦人科学会専門医/専門分野 婦人科
広島大学附属病院等の勤務を経て2010年に「成城松村クリニック」を開院。日本産科婦人科学会に専門医として所属。さまざまな悩みや不安を抱える女性をサポートするため、講演、執筆、TV出演など幅広く活躍中。